補足解説・襖絵の妙
2010年 07月 09日
日用の住宅考WEBマガジン“Daddy's at home”のコラム、『襖絵の妙』の
補足説明です。
*1
大徳寺聚光院伊東別院は岡崎重代女史が亡き夫の追善と仏門興隆、世界平和を祈念し
創建したもので建物は故・吉村順三の設計による。襖絵は千住画伯が代名詞ともいえる
「滝」を中心に6年の歳月をかけて77面8部屋に摘き2002年12月に完成、寄進された。
京都にある本院の聚光院が臨済宗大徳寺の塔頭のひとつであり、千利休の墓所・茶道
三千家の菩提寺となっていることから禅と茶道の実践道場になるようにも意図されている
建物です。
*2
吉田先生が設計された三重県の住宅の襖絵制作の様子。図案は伊勢湾の千本松原が題材。
吉田先生いわく、絵を描くことは楽しい作業だと言う。描くことによって生まれてくる余白が
人に空間を感じさせる力になるのだと・・・ 絵の色は建築の空間に何か艶っぽい色気を
与えているようだ。しかし、下描きも何も無しでいきなり無言で描き進めていかれるのには
驚かされる。途中一服を挟むものの一気に描きあげるのだ。真っ白な襖紙に対峙したとき
そこに何か描きたくなる。何も無いまっさらなものには、汚してみたくなる衝動をぐっと
押さえている我慢があるらしい。機能主義建築が早々と落ち目になった裏には、そんな心情が
隠されているのだと・・・意味深な言葉には考えさせられる事が多いのです。
*3
前にも述べた加茂サッシの開発に吉田先生とともに係った建築家に松本昌義氏がおられる。
吉田氏のもとから独立した後、松本氏は建具職人・新井正氏(杢正)と出会い、加茂サッシの
改良改善と平行して建具職が製作する内部建具や襖の研究に尽力を注いでおれれる。氏の
設計作法は基本計画段階からすでに開口部に入る建具のデザインや開閉方式とどんな材料で
建具を作るかを家全体のデザインと平行させて進めていくこと。この段階ですでに新井氏が
建具職人としての立場でデザインや開閉方式、素材に対して意見を述べる。このように義務と
して果たさなければならない自分の職能の範囲を超えて相手の立場を尊重しながらも互いの
考えをぶつけ合う、このような抗いがあってこそ洗練されたデザインは生まれてくるのだろう。
新井氏いわく、通常の建具屋は設計者なり元請施工者から建具の図面だけを渡されて、現場で
採寸して製作するだけ。しかし、これではその家がどのような考えのもとにどんな計画、
デザインがされたのか判らず、どのような建具を作れば、いっそう空間が引き立つか、さらに
醸成されていくかが理解できないと言われます。そんな状況では、その家の屋根が瓦なのか
鋼板なのか寄せ棟なのか切り妻なのかなど判断できない。構造も現しなのか大壁なのか、最終
的にどのような空間になるのか伝わってこない。建具職だけでなく多くの職方が自分の仕事に
しか興味が無いというのが実情だ。デザインの最終的な責任をもっているのは建築家なのだから、
直接、設計者と協議や相談ができる状況がいい建具をつくれる条件だと説いている。
また、彼らの特徴は材の使い方にも表れている。柾目だとか赤味だとかにこだわらず、今そこに
ある木を上手に使うという事をモットーとしている。それがコストを押さえて性能の良い
美しい建具を創作する原点となっているのです。
補足説明です。
*1
大徳寺聚光院伊東別院は岡崎重代女史が亡き夫の追善と仏門興隆、世界平和を祈念し
創建したもので建物は故・吉村順三の設計による。襖絵は千住画伯が代名詞ともいえる
「滝」を中心に6年の歳月をかけて77面8部屋に摘き2002年12月に完成、寄進された。
京都にある本院の聚光院が臨済宗大徳寺の塔頭のひとつであり、千利休の墓所・茶道
三千家の菩提寺となっていることから禅と茶道の実践道場になるようにも意図されている
建物です。
*2
吉田先生が設計された三重県の住宅の襖絵制作の様子。図案は伊勢湾の千本松原が題材。
吉田先生いわく、絵を描くことは楽しい作業だと言う。描くことによって生まれてくる余白が
人に空間を感じさせる力になるのだと・・・ 絵の色は建築の空間に何か艶っぽい色気を
与えているようだ。しかし、下描きも何も無しでいきなり無言で描き進めていかれるのには
驚かされる。途中一服を挟むものの一気に描きあげるのだ。真っ白な襖紙に対峙したとき
そこに何か描きたくなる。何も無いまっさらなものには、汚してみたくなる衝動をぐっと
押さえている我慢があるらしい。機能主義建築が早々と落ち目になった裏には、そんな心情が
隠されているのだと・・・意味深な言葉には考えさせられる事が多いのです。
*3
前にも述べた加茂サッシの開発に吉田先生とともに係った建築家に松本昌義氏がおられる。
吉田氏のもとから独立した後、松本氏は建具職人・新井正氏(杢正)と出会い、加茂サッシの
改良改善と平行して建具職が製作する内部建具や襖の研究に尽力を注いでおれれる。氏の
設計作法は基本計画段階からすでに開口部に入る建具のデザインや開閉方式とどんな材料で
建具を作るかを家全体のデザインと平行させて進めていくこと。この段階ですでに新井氏が
建具職人としての立場でデザインや開閉方式、素材に対して意見を述べる。このように義務と
して果たさなければならない自分の職能の範囲を超えて相手の立場を尊重しながらも互いの
考えをぶつけ合う、このような抗いがあってこそ洗練されたデザインは生まれてくるのだろう。
新井氏いわく、通常の建具屋は設計者なり元請施工者から建具の図面だけを渡されて、現場で
採寸して製作するだけ。しかし、これではその家がどのような考えのもとにどんな計画、
デザインがされたのか判らず、どのような建具を作れば、いっそう空間が引き立つか、さらに
醸成されていくかが理解できないと言われます。そんな状況では、その家の屋根が瓦なのか
鋼板なのか寄せ棟なのか切り妻なのかなど判断できない。構造も現しなのか大壁なのか、最終
的にどのような空間になるのか伝わってこない。建具職だけでなく多くの職方が自分の仕事に
しか興味が無いというのが実情だ。デザインの最終的な責任をもっているのは建築家なのだから、
直接、設計者と協議や相談ができる状況がいい建具をつくれる条件だと説いている。
また、彼らの特徴は材の使い方にも表れている。柾目だとか赤味だとかにこだわらず、今そこに
ある木を上手に使うという事をモットーとしている。それがコストを押さえて性能の良い
美しい建具を創作する原点となっているのです。
by knaw
| 2010-07-09 18:10
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