奈良県の一級建築士事務所 (建築設計事務所) 中尾克治建築設計室のブログ 建築設計監理・家具デザイン・庭園デザイン


by knaw
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緑の中の小さな書庫(真夏の建物見学記その2)

森の木立の中に小さな赤い倉庫のような建物が見える。
分厚い板というより桟木を目透かしで張り巡らされた小さな建物は山荘である母屋と
≒16度の角度を振って静かにたたずんでいる。
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この小さな「倉庫のようなもの」の正体はフランス文学者・平岡篤頼の蔵書を納める書庫。
昨年から一般公開された『平岡篤頼文庫』である。実に簡素に作ってあるのだが、よくよく
眺めてみるとシビアなディテールで構成された建築である。
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ルーバーのようになった外壁は夜になると闇の中で灯りがシルエットのように浮かび上がる
事が容易に想像できる。昼間は室内に自然光が差し込んでいる。書庫に自然光が入ると
いうのはNGのような気もするが、ここではごく自然に取り込まれている。保存を対象と
した古書のような蔵書でなく故人の私的な蔵書なので、そこまで気を使っていないとの事。
しかし色合いが良い。森の緑の中で赤茶けたオイルステイン塗装は補色の対比で小さな
建物をより鮮明に際立たせている。
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シビアなディテールの集積でこの小さな建築を設計した人は誰か?
先に「倉庫のようなもの」と書いたのはちょっとしたヒント。このフレーズで数々の名建築を
生み出したひとです。そう内藤廣さん。
奈良からこの建築を見に来たと言うと、平岡夫人にいろいろとお話を伺えました。
平岡篤頼氏は大阪生まれで子どもの頃は奈良の西大寺の親類の家に疎開していたそうで、
秋篠寺の境内が大好きだったそうです。僕の関西弁を聞きながら懐かしそうに「平岡はね、
関西弁が母国語で標準語が第一外国語、フランス語は第二の外国語だったのよ。」と
話してくれました。内藤廣さんの設計秘話も少しばかり・・・
書庫の中に忘れ物をして、ご迷惑もお掛けしました。
by knaw | 2010-08-18 02:40 | ♪度々の旅