旅先のゲストルーム18
2011年 08月 21日
大型の温泉旅館やリゾートホテルがひしめく南紀・白浜の温泉街のまだその先、
少しばかり足を伸ばした所にあるのが椿温泉。大きい宿や施設などほとんど無く
その“鄙びた”感がとても良い。
そんな椿温泉郷の奥まったところに佇むのがたった6室だけの小さな宿『海椿葉山』。
エントランスになる楕円形のサロン棟とその奥に軒のひくいヒューマンスケールの
宿泊棟がレベル差のある中庭を挟みこむように建っています。
道路の方が敷地より高いので建物に入る前に海は見えるのだけれど、一旦、宿に
足を踏み入れるとチェックインをすまし部屋に案内されるまで海は見えそうで
ほとんど見えない。チラリズムの感じ。そして部屋に入ると木製のデッキ越しに
紀州の海がドバッー。高い断崖の上に建っているので遮るものは何も無い。
この宿は建築家・竹原義二さんの代表作のひとつ。1999年の竣工。
翌年、ある講演会でこの建築をスライドで紹介してもらい一目ぼれ。
すべて手描きの図面の迫力に圧倒され、素材やディテールその他こだわりと
妥協なき探究心と追求魂に感服。すごい建築家がいるもんだと目が点になる。
一度、泊まりに行かなければ!と思い、
随分以前に宿泊予約をしようと宿に電話をした。
「×月×日から一泊。大人ふたりと子どもふたりの4人です。」
「ここは、子どもさんは宿泊できません。」
「えっ!家族なんですけど。親が一緒でもだめなんですか?」
「はい、子どもさんは一切お断りしております。すみません。」
ということで断られてしまった。
あらまぁ、ということでまだ小学生だった娘たちをほっといて相方とふたりで
行く訳にもいかず、仕方無く諦めたのでありました。
そうか、ここは愛人とこっそり、イソイソとお忍びで来てくださいませ。
というオトナの宿なのだな!と思ったりしたものだが、残念ながらそんな
お相手もおらず、そらから9年の月日が過ぎてしまいました。
子どもは宿泊制限にひっかかる年齢ではなくなりましたが、逆に親について来る
歳では無くなり、「ふたりで行ってきいや。」となり、やっと今年泊まりに行く
事になりました。メデタシメデタシ
宿のリーフレットにはこんなキャッチコピーが書かれていました。
「その宿で、私は海ばかり見て過ごした。」ほんとうにそんな素晴らしい宿で、
確かにチェックイン後、午後のキラキラ反射した海、西に陽が傾きオレンジ色に
染まる海、月明かりに照らされイカ釣り漁船の漁火が灯る銀の海、早朝のまだ眠り
から覚めていない群青の海、昼前に順光で見れる鮮やかなマリンブルーの海と
時の流れとともに表情を変えていく海を見ているだけで、ただそれだけでいいと
いう思いを感じる空間。しかししかし、悲しいかな建築ジャンキーにはこの宿は
海をみているだけでは済まないのであります。数々の賞を総なめにしている名建築。
一目ぼれした憧れのひとにやっと逢えたワクワクドキドキ感から、写真パチパチ
撮りまくり、スケールであちこち測りたおし、台に登ったり、寝そべったりして
どんな素材を使っているか、どんな納め方にしてあるのか調査の時間は一泊では
足りない。かつて故・宮脇檀さんは吉村順三さん設計の京都・俵屋を評して、
こんな疲れる宿は無いと、うそぶいたとうエピソードがありますが、海椿葉山も
同じ事で寝る間もない。今回宿泊したのは『海星』という間。「全室堪能しようと
思うと、最低あと5回泊まらなければなりませんな!」そんなことを朝食の時に
仲居さんに話していたら、気を廻してくれて「『海月』『海蛍』のお客様がすでに
チェックアウトされましたので、よかったら室内を見られますか?」と声を
かけて下さった。ありがとうございます。すべて設えが違う6室のうち3室を
今回の旅で見る事が出来ました。
節電の夏 日本の夏
平屋の暮らしを愉しむ
“天然蒸留水=雨”について考えよう
“緑のカーテン”ってなんだろう!?
生物多様性の生活空間・場所~田園住宅のススメ
奈良が産んだ彫刻家・井上武吉の“哲学の庭”
WORKS
日用の住宅考WEBマガジン“Daddy's athome”
少しばかり足を伸ばした所にあるのが椿温泉。大きい宿や施設などほとんど無く
その“鄙びた”感がとても良い。
そんな椿温泉郷の奥まったところに佇むのがたった6室だけの小さな宿『海椿葉山』。
エントランスになる楕円形のサロン棟とその奥に軒のひくいヒューマンスケールの
宿泊棟がレベル差のある中庭を挟みこむように建っています。
道路の方が敷地より高いので建物に入る前に海は見えるのだけれど、一旦、宿に
足を踏み入れるとチェックインをすまし部屋に案内されるまで海は見えそうで
ほとんど見えない。チラリズムの感じ。そして部屋に入ると木製のデッキ越しに
紀州の海がドバッー。高い断崖の上に建っているので遮るものは何も無い。
この宿は建築家・竹原義二さんの代表作のひとつ。1999年の竣工。
翌年、ある講演会でこの建築をスライドで紹介してもらい一目ぼれ。
すべて手描きの図面の迫力に圧倒され、素材やディテールその他こだわりと
妥協なき探究心と追求魂に感服。すごい建築家がいるもんだと目が点になる。
一度、泊まりに行かなければ!と思い、
随分以前に宿泊予約をしようと宿に電話をした。
「×月×日から一泊。大人ふたりと子どもふたりの4人です。」
「ここは、子どもさんは宿泊できません。」
「えっ!家族なんですけど。親が一緒でもだめなんですか?」
「はい、子どもさんは一切お断りしております。すみません。」
ということで断られてしまった。
あらまぁ、ということでまだ小学生だった娘たちをほっといて相方とふたりで
行く訳にもいかず、仕方無く諦めたのでありました。
そうか、ここは愛人とこっそり、イソイソとお忍びで来てくださいませ。
というオトナの宿なのだな!と思ったりしたものだが、残念ながらそんな
お相手もおらず、そらから9年の月日が過ぎてしまいました。
子どもは宿泊制限にひっかかる年齢ではなくなりましたが、逆に親について来る
歳では無くなり、「ふたりで行ってきいや。」となり、やっと今年泊まりに行く
事になりました。メデタシメデタシ
宿のリーフレットにはこんなキャッチコピーが書かれていました。
「その宿で、私は海ばかり見て過ごした。」ほんとうにそんな素晴らしい宿で、
確かにチェックイン後、午後のキラキラ反射した海、西に陽が傾きオレンジ色に
染まる海、月明かりに照らされイカ釣り漁船の漁火が灯る銀の海、早朝のまだ眠り
から覚めていない群青の海、昼前に順光で見れる鮮やかなマリンブルーの海と
時の流れとともに表情を変えていく海を見ているだけで、ただそれだけでいいと
いう思いを感じる空間。しかししかし、悲しいかな建築ジャンキーにはこの宿は
海をみているだけでは済まないのであります。数々の賞を総なめにしている名建築。
一目ぼれした憧れのひとにやっと逢えたワクワクドキドキ感から、写真パチパチ
撮りまくり、スケールであちこち測りたおし、台に登ったり、寝そべったりして
どんな素材を使っているか、どんな納め方にしてあるのか調査の時間は一泊では
足りない。かつて故・宮脇檀さんは吉村順三さん設計の京都・俵屋を評して、
こんな疲れる宿は無いと、うそぶいたとうエピソードがありますが、海椿葉山も
同じ事で寝る間もない。今回宿泊したのは『海星』という間。「全室堪能しようと
思うと、最低あと5回泊まらなければなりませんな!」そんなことを朝食の時に
仲居さんに話していたら、気を廻してくれて「『海月』『海蛍』のお客様がすでに
チェックアウトされましたので、よかったら室内を見られますか?」と声を
かけて下さった。ありがとうございます。すべて設えが違う6室のうち3室を
今回の旅で見る事が出来ました。
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by knaw
| 2011-08-21 10:45
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