奈良県の一級建築士事務所 (建築設計事務所) 中尾克治建築設計室のブログ 建築設計監理・家具デザイン・庭園デザイン


by knaw
カレンダー
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30

和紙と暮らす

建具改修現場の障子ができた。前に紹介した吉野の手漉き和紙を太鼓貼りで貼った
吊式の紙貼り障子です。

和紙と暮らす_c0175075_96996.jpg
和紙と暮らす_c0175075_962949.jpg

組子のデザインで遊ばず、和紙のサイズに合せて組子割を決めてひと枡ごとに
手漉き和紙を貼り込んだシンプルな姿形にしています。この家はコンクリート打放しの家で
リビングは大理石貼りというテイスト。ごく一般的な感覚ではそんな空間に和紙障子と
いうのはミスマッチと思うかも知れませんが、決してそんなことは無いと思うんですね。
障子を使うとすぐ和風ですねとか言われるけど、和とか洋とか単純な判断で選んでいる
のではないのです。

和紙と暮らす_c0175075_965323.jpg

紙貼障子というのは光をコントロールする道具として大変優れていて、和紙に透かされた
光は優しく散光し、淡く室内を包み込みます。光の方向によっては影が写り込み、障子の
向こうの気配を感じ取ることもできる。自然紙だから調湿機能をもっているし断熱効果が
高いという利点もあり、開閉によって重なった和紙で光の強さも変わり風景も呼び込むことが
できる。大変優れた建具であることは古今いろんな建築家たちが既に証明して来ました。

和紙と暮らす_c0175075_971495.jpg

光のコントロールが障子の最大の魅力であることはそんなところですが、今回の様に
手漉き和紙を使用するときのもうひとつの小さいけれど大切は魅力があって、それは“耳”。
和紙の“耳”というのは紙の端っこのこと。機械で裁断したシャープなエッジではなくて、
漉き簀の端に当たってモケモケというかモヤモヤ(表現が難しい)となった端部のこと。
これを活かさなくちゃ、せっかく手漉き和紙をオーダーした意味が無くなってしまうといって
過言ではない。四方向全てに耳が付いている和紙を「四方耳付き」と言うのですが、
今回の素材はその「四方耳付き」の紙。基本的に和紙サイズに合せて組子割を決めたと
いっても、それは縦の割付で、高さは全ての部屋、全ての窓共通だったからよかったけど、
横は窓ごとに違ったので建具幅に合せて、和紙に水を付けて手ちぎりするのです。
手間をかけてもらった分、愛着も高まります。

かつて日本の家は木と紙でできていました。植物に由来する素材は建物を呼吸させ、
湿度や温度を調整していた訳ですね。家も生きているんですね。生きたものは世話がかかる。
世話がかかるほど愛すべき存在になる。これ自明の理。


桜並木の家[信貴山の棲居]

平屋の暮らしを愉しむ

“天然蒸留水=雨”について考えよう

生物多様性の生活空間・場所~田園住宅のススメ

WORKS



和紙と暮らす_c0175075_1827777.jpg







日用の住宅考WEBマガジン“Daddy's athome”
by knaw | 2012-07-13 09:09 | ♪建築現場から