奈良県の一級建築士事務所 (建築設計事務所) 中尾克治建築設計室のブログ 建築設計監理・家具デザイン・庭園デザイン


by knaw
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チルチンびと

師匠の吉田桂二さんの紹介も有って、風土社が発行する
人気雑誌『ちるちんびと』の76号に信貴山の棲居[桜並木の家]
が紹介されています。

チルチンびと_c0175075_10231952.jpg


信貴山の棲居

敷地は奈良県三郷町信貴山の東麓に位置し、信貴山に上る登山道に沿う様に高台にある。
大和盆地の風景を遠望できるこの土地に結婚を機に新居を建てようと思った建築主と
初めて会ったのはもう8年ほど前の事。少々不便でも街中の喧騒から離れて静かな自然の
中で過ごす事を目的とした住宅です。
最初に敷地を訪れた時、苔むした石垣の上に緩やかに傾斜した土地は、沿道や周囲の
土地に大きく育った桜並木によって掌で包み込まれているようだった。
できることならこのままの土地形状を活かした住まいの計画をと思ったのだが、石垣の
安全性や脆弱な地盤への対応などいろいろな問題点を解決し、安心安全な家にしたい
という建築主の要望で土地は開発行為をかけて造成されることになった。  
擁壁の上に平らな宅地が出来あがったが、桜並木に包まれながら木々の間から眺望を
愉しめるロケーションに変わりなない。
求めたイメージは山の上の小さな分校の木造校舎。素朴で素直で質素な家がこの場所
にはピッタリくると感じた。その想いは建築主も同じこと。
単純で明快な切妻屋根の構造架構の中に必要とされる部屋を滑り込ませた。
周辺の自然環境と呼応するように開口部を設け、南東と北西に設けた庭とダイニング
リビングが一列に流れるように繋がっている。
アウトドア派で活動的なご夫婦のため、いつも家の中で過ごしているというのは似合わない。
季節や時間に応じて北庭・南庭をうまく使い分けながら屋内外を有機的に行ったり来たりの
暮らしができるように配慮したつもり。南庭には深い軒内の土間空間を作り、内外を繋ぐ
中間領域としている。北庭の木製デッキは夏場の朝日を受け、日中は建屋の陰になるので
涼しげで過ごしやすい“夏のデッキ”。信貴山頂や朝護孫子寺も望めるし、順光で桜並木を
愛でる事ができる裏の眺望スポットだ。
幾多の事情があり途中中断を経て、初めて敷地を訪れた日から完成まで足掛け7年を
要した。建築主と一緒に庭造りに使う枕木や石を探しに行きトラックで運んだりした事も
いい想い出になっている。造成のために最小限の桜が伐られ、当初の様な包まれた感じは
少なくなってしまったが、一方で住まい手が暮らしの中で庭づくりを通じて植える木々が
大きく成長し周辺の緑と同化し、再び緑の掌に包み込まれたような環境に育っていく事を
願ってやまない。


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WORKS

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日用の住宅考WEBマガジン“Daddy's athome”
by knaw | 2013-09-22 10:26 | ♪ニュース